創作日誌 12/14(木)

 

メンバーのみの稽古でした。
参加したのは榎並・熊谷・甲田・津和野・矢吹

冨坂さんの人選ですので、なにか思惑あってのことです。
この日はネタ出しというよりも特訓でした。

アガリスク以外の脚本を使ってみる、コピー稽古。
コピー稽古と言いますが、演技をすべて模写するわけではなく、
「あのシーンが成立するためには何が必要なんだろうか。そしてそれを出来るようになろう」という事が目的となっています。

冨坂さんは近頃この手法が気に入ってる様子です。

 

まず、以前も使用した某有名コメディの台本をやってみます。
人数が少なかったので一人3役ぐらいやってる人もいましたが、
そのシーンのメインとなる人物をローテーションで演じていきました。

 

主なテーマは
・「榎並夕起の圧」
・「矢吹ジャンプのキャラクター」

榎並さんが卒業式実行委員会の委員長をやるにあたって圧が足りないのではないか?
そんな思惑から、例の某有名コメディでとある役が感情をぶつけるシーンをやってみる。
冨坂「なるほど。こういうのは出来るんだな」と、予想と違った榎並さんの演技に好感触を持った様子。

もう一つ、ジャンプさんの配役どうしよう問題。

◇関連記事
執筆中の独り言by冨坂③「配役のはなし」
創作日誌 12/1(金) …左翼教師だと発表された
創作日誌 12/5(火) …校長サイドの人間が少ない問題※記事では直接触れませんでしたが、ジャンプさんの配役を変える可能性が示唆されました。

このコピー稽古の台本では、暴挙に出る女性に対して、説得する立場を演じるジャンプさん。

真面目な態度で自身の考えを吐露してその女性の心を動かし、
俳優の真に迫る演技で、観てる側も突き動かされる長台詞の名シーンです。

もしかしたらジャンプさんにそういうシーンあるかもだよってことでやってみましたが、ジャンプさんは苦戦された様子。

次に同じ役を甲田くんが演じます。
冨坂「卒業生のことばで、まさに長台詞を喋るわけだからね」
ということでやってみると、なかなかにハマっていました。
この違いはなんだろうねなんて話しつつ、次の稽古へ。

 

「榎並委員長と甲田先輩の関係性を探りたい」とのことだったので、
てっきりエチュードをやるのかと思ったらとある台本が配られました。

(下記コメントで冨坂さんが隠さず言ってしまったのでもう言っちゃいますけど)
「ちゅらさん」のワンシーンをやりました。

主人公が積年の想いを伝える、なかなかに甘酸っぱいシーン。

まずは榎並・甲田。

 

ほう・・・

見ててもソワソワしてしまうような甘酸っぱい言葉のオンパレードです。

ちょっと暗く重たい印象で台詞を言う榎並さん
「自分だったらどう言うかなって思ってやってみた」とのこと。

次に「わたしもこういうのやりたい」と挙手してやってみた熊谷・甲田パターン。
恥ずかしさにソワソワしながらも、明るくカラッと演じました。
冨坂「これはアリ」「ところどころ笑うのがいい」とのことで、
それを踏まえてもう一回榎並・甲田パターン。

きわめてアガリスクらしくない芝居を要求されてるので、
稽古場はいつもとは違った雰囲気でした。
緊張感とニヤニヤ(見てるほうの)が入り混じった空気感。

2回目のターンが終わりましたが冨坂「他人事っぽいんだよなぁ」ということで、これはこれで課題になった様子。

しかし、今回の『卒業式、実行』にはこんなシーンないんですけどね!
とは言え、俳優としての力を試すいい稽古でした。

さてこの稽古が作品にどのような影響を及ぼすでしょうか。

 

冨坂ノート

今日はコメントが難しい!
なぜなら例のコピー稽古ばっかりやったから!

テーマは
「榎並の出力おとなしすぎるのでは?問題を検証」
「ジャンプさんの配役を考える」
「榎並委員長と甲田先輩の関係性を探る」
です。

先日に引き続き某ラジオ局バックステージコメディの書き起こしを使って、中盤の、素人作家が自分の台本が変えられていくことに耐えかねて爆発するシーンと、それに言い返すプロデューサーの、熱いシーン。
「できそう」っていう観点から、プロデューサーに津和野、素人作家に熊谷を配置。何回か返して基準となる演出をつける。
その後、素人作家を榎並にしてやってみる。さて、バキッと訴えることができるのか…?

結果…別に何の問題もなくできた。
あれ?これは得意分野なのか?「大人に苦情を申し立てる若者」みたいなフォーマットに乗ると、結構馬力が出せることが判明。多分、関係性において「上の立場」みたいになるのが苦手で「下の立場」だとやりやすいんだろう。これは本人のパーソナリティとか今までの人間関係での慣れも影響しているのだろうけど。ただ『卒業式、実行』では委員長な訳で。現場サイドの人間の中では上の立場。ともするとこのラジオのコメディでいうプロデューサーやディレクターに近い立場なので、そのポジションでの立ち振る舞いに慣れなきゃいけないのと、脚本上も榎並夕起の見た目や声や喋り方がしっくりくるリーダー像を開発しなきゃいけないな、と確認。

逆にジャンプさんがプロデューサーとして相手に厳しいことを言う場面で苦戦。なんだろう、無意識のうちに全身を「シチュエーションコメディ膜」「デフォルメ」が覆ってる感じ。型みたいになっちゃう。
で逆に甲田がやると、不器用すぎていろんなポイントを押さえてないんだけど、なんか「聴ける」。聴いていられる。この「こいつの言ってること聞いてやらなきゃダメだな」と思わせる何かは何由来なんだろう。嘘のなさ?作為のなさ?これは『卒業式、実行』でも大いに使えそうな要素だ。

その後、違うパターンのストレートに感情をぶつける、相手にベクトルを向ける芝居が見てみたくて、書き起こし第二弾。
もう言っちゃうけど、NHK朝ドラ「ちゅらさん」の81話。恵里が12歳の頃から想いを寄せてて、ここ数年同僚として接してた文也に想いを告げる告白のシーン。恵里を演じる国仲涼子が凄いシーン。俺の思う「どヒロインや!」って芝居の極北。
アガリスクじゃ絶対にやらないけど、『卒業式、実行』でこんなシーンないけど、でもやっぱり俳優たるものいつでもこういうナイフは抜けるようにしといたほうがいいよね、と。
榎並特訓第二弾としてやってみたけど、熊谷が読んでて「私もこういうのやりたーい」というから、いい比較になるかも、と思いやってもらった。

1stチャレンジ。あんまり作りこまずにやった榎並は暗くて重いやつになってた。
2ndチャレンジ。熊谷は途中まで恵里の甘すぎる台詞に苦戦してたけど、後半から本人の中でギアが噛み合ったのか、笑ったり泣くのを堪えたりといい感じ。
3rdチャレンジ。榎並が「ちょっと笑ってしまう」など色々ポイントを意識してやった結果、俯瞰しすぎて他人事みたいに見えてしまう。

時間切れなのでここまでにしたけど、この「ヒロインをやりきる」という力について考える。
「ちょっと小っ恥ずかしいけど真っ直ぐなセリフを、言い切る」あと「その瞬間に一番魅力的に見えるビジュアル」っていう、基本的で王道なスキルってほんと重要だな、と。
あんまりそういうシーン自体ないってのもあるけど、小劇場でインディペンデントな作品をやってると、ついつい避けてしまったり、「あえて」に走ってしまうけど、でもやっぱり「日常生活じゃ見ないビジュアルの人が」「日常生活じゃ聞かない素敵なセリフを言う」のって、見たいよね。見世物なんだもん。
美男美女のタレントと同じ攻め方をしてもしょうがないとも思うけど、自分の見た目・肉体なりの王道の攻め方はある程度意識しておかなきゃいけないなぁと痛感。
多分これは読解力とか表現力とかだけじゃ無く、胆力と自意識だな、と。現状、アガリスクだと熊谷有芳が一番てらい無くできる。