プレ稽古一発目でした。
まだ台本はなく、ガイダンスだったり別作品台本で稽古したりの日です。
客演のみなさんも集まっての稽古は初めてです。
稽古開始前には、すこしだけ緊張感。
自然と男女分かれて合コンみたいな席順になっていました。
今日の稽古内容は
一、国府台高校とその卒業式のガイダンス
二、卒業式についてのエピソード出し
三、『ナイゲン』読んでみよう
だと、冨坂さんから発表されました。
いかにもプレ稽古って感じです。
その前に軽く自己紹介。
冨坂さんの隣に座っている彼は、岡田拓人くん。
国府台高校の卒業生で冨坂・淺越の後輩にあたります。
と言っても、年齢がだいぶ離れていますが。
今回は演出助手として、稽古場を支えてくれます。
たくさんノートをとってくれたので、今度彼にも話を聞いてみたいですね。
一、国府台高校とその卒業式のガイダンス
ざっと自己紹介を終えて、まずは配られたレジュメをもとに冨坂さんによる国府台高校の卒業式における国旗・国歌問題についての解説が行われました。
レジュメは3枚あり、なかなかボリューミーな内容でしたのでこちらでは割愛させていただきますが、筆者は気づきました。
レジュメに書いてあることはほとんど『紅白旗合戦』の台詞でした。
いや、むしろ台詞がレジュメだったと言ってもいいくらいです。
気になる方は『観劇三昧』でご覧いただけます(DVDは劇団のほうでは完売したのです)。
一応、どんな説明だったかざっくりと書きますと、
・冨坂は学生時代に「卒業式実行委員会」(以降、卒実)の委員だった。
・生徒「生徒間で決めた案を尊重してくれ」
・教員「一般的な形でやらないと不自然」
・案が対立したり決裂したり
ということを、歴史の授業のように解説していました。
これは卒業式のプログラムが最終的にどうなったかという解説。
国歌を歌わないという生徒案を尊重するために「再入場」という方法がとられました。
これも『紅白旗合戦』でそのまま登場した案ですね。
冨坂さん曰く、
「過去の作品では会議・準備・後片付けを描いてきたが、今回は本番当日=現場を描くバックステージコメディとなる」
とのこと。
卒業式、つまりセレモニーがまさに行われている状況を描くというわけです。
劇団の過去作品を例にとり、
・『紅白旗合戦』…「暗転(や場転)があるとお話を追ってしまう」
・『そして怒濤の伏線回収』…「一幕にすることでネタになる」
⇒「今回もワンシチュエーションでやり、クライマックスを『怒濤~』のようにド派手な事をする」
と言っていました。
ワンシチュエーションによる現前性により、物語は「ショー」「トラブル」「ハプニング」といった「事件」となり、観客は事件の「目撃者」となる。
『紅白旗合戦』は「バトル」でしたが、
『卒業式、実行』は「トラブル」なのです。
●配役の話
先日の記事「配役のはなし」を参照しつつ、全員の前で簡単に解説。
その中で変更、決定した人々が以下。
矢吹ジャンプ:左翼教師
…なんとノンポリ教師から生徒をそそのかしちゃう左翼教師という真逆な立場に。学校とかにも反発しちゃうような、学校側にとって面倒な教員。思想に従ってアクティブに活動しちゃう。生徒にとってどうかと言うと…?
『紅白旗合戦』の村松先生を彷彿とさせる人物像ですね。
冨坂さん曰く「ノンポリだとちょっと勿体ないかなって。ジャンプさんをそういう活動的な先生に見せるってのが課題ではある」
藤田慶輔:校長
中田顕史郎:長老タイプ教師
…お二人の配役を、校長・社会科教師のどっちにしようか(どっちにもオイシさがあるなぁ)と悩んでいましたが、藤田さんを校長、中田さんを「配役のはなし」の後半で書いている長老タイプの先生にしました。
配役について話してる時に、藤田さんよりこんな声が。
「登場人物がみんな当事者だけど、新人的な人(=無知な人、事件との関係が薄い人)、お客さんと同じ目線の人がいるんじゃないかな」
なるほど、たしかにそうだ!
・主人公(ミッションを遂行したい人)
・敵(ミッションを邪魔するやつら)
ばかりで、第三者的目線で語れる人がいないね、といい発見ができました。
「それなら、そのポジションは星さんかなぁ」
ということで、榎並・津和野の卒実ペアに加えて、有志の司会として卒業式に参加する星さんも卒実の仲間的な人になりました。
美術部の線はなくなりました。
代わりに沈さんが美術部濃厚となっています。
まあ、まだ変更の可能性はあるのですけどね。
配役事情から目が離せません。
二、卒業式についてのエピソード出し
こちらは、みんなのエピソードを聞いて、「へえ~」ってなりました。
割愛。
三、『ナイゲン』読んでみよう
読んでみようというか、即立ち稽古でした。
配役の主なポイントとしては、
・議長:榎並
・どさまわり:斉藤
あたりでしょうか。
特に「どさまわり:斉藤コータ」は『卒業式、実行』の肝ともいえる配役のようです。
どさまわりをちゃんとコメディにすること。
そして、配役もそうですが、『ナイゲン』のラストのあの「ノリ」(アガリスク稽古場での頻出ワード)、それを掴むこともこの稽古の狙いの一つ。
配役を変えてもう一度やり、この日の稽古は終了となりました。
正直、我々は「いつものメンバー」感を勝手に感じてしまうんだけど、客演の星さんは初めてアガリスク稽古だったりするんですよね。慣れちゃあいかんですなぁ。
本日は『卒業式、実行』のモデルとなる国府台高校の卒業式の特徴の説明、2000・2001・2002年度に実際に国府台高校(あと東葛高校も小金高校もだけど)で起きた国旗国歌についての騒動の経緯を簡単にレクチャー。そして質疑応答。
もちろん作品としては、見てくれるお客さんは何も知らずにフラッと見に来ても楽しめるコメディにするのですが。アガリスクは出演者に色々なネタを出してもらって作品を作るので、その性質上、出演者には台本ができる前からバックグラウンドを知っていてもらう必要があるのです。
ただ、この問題の厄介さったらないよね。複雑な上に、今現在世間で議論されてる社会問題とも違って、ある種のローカルルールでもあるので、なんとも全体像が掴みづらい。
とはいえ今回の出演者は本作のモデルとなる『紅白旗合戦』を見てくれた方々が多いので、それはとても助かったのですが。
でも、人に話すのは大事なもんで、「どの登場人物をお客さんの目線に立たせるか」で配役がより固まったし、「鳥獣戯画」という馬鹿みたいなネタが出て来たのは収穫。
その後は皆の卒業式イメージを収集。これに関しては、本人のパーソナリティを鑑みると興味深いものは沢山あったけれど、多分作品には使われなさそう。おそらく皆に投げかけた設問を間違えた。
卒業式の話だけれど、おそらく卒業式のエピソードじゃなくて、文化祭だったり、放課後の一瞬だったり、そういった他の場面を取り入れていくことが大事なんだと気づくなど。(『ナイゲン』は文化祭の準備の話だけど、ラストとか謎の卒業ムードがあったじゃない?そういうこと)
その後、配役やキャラクターの方向性を検証するために既存脚本で立ち稽古。特性をわかっている芝居を使おうとすると、どうしてもナイゲンになっちゃうんですよね。ナイゲンの終盤、議長が「節電エコアクションをやりたくなるようなやり方」を提案して皆が参加する例の楽しいところを配役を変えてやってみる。
以下、Twitterに書いたこと。
今日プレ稽古で監査(星さん)vsアイスクリースマス(藤田さん)の芝居見てて言い忘れたことを考えてたら、なんかアガリスクの作風のうちの「ノリ」の部分、演技のテンションの部分が言語化できた気がする。
「小難しいこと(ややこしい台詞)」を「少年漫画みたいなベタな解釈」で「くだけた(お笑い文法に影響された現代若者っぽい)感じ」で喋るとウチっぽいのかもしれない。意外と真ん中の「少年漫画みたいな解釈」が重要かも。それ無しに小難しい台詞を生真面目にナチュラルな演技体でやると、っぽくない。
ちなみに監査vsアイス(笑の太字とか怒濤〜にも頻出する)に見られる傾向なんだけど、「相手の台詞を受け取って附に落とす」というアクションを省略した方が却って意思疎通してるように見えることがある。相手の意見を聞く「ふむふむ」は常に流しといて、相手のピークと同じテンションで一音目を発する。
相手のテンションを引き継いで、乗り継いでいく感じ。テンションを継承してることでハタから見ると「なんか息合ってる」に見えるし、そこから世の先行作品を連想して「ぶつかってるけどわかり合ってる例のパターンだな」と引っ張ってきてくれる。省略してる「受け取る」という動作を補完してくれる。
「そんな記号的な”あるある”でいいんかい」という批判もできなくはないけど、そういう手っ取り早い即物的な手で場の温度を盛り上げるの、よくやる。そのかわり「創作物のオリジナリティ」とか「商店街活性化の先行事例」とか「卒業式の国旗国歌」みたいな小難しい話題でも楽しもうよ、というスタイル。
この”あるある”の組み合わせと観客の脳内補完を利用して沢山の要素を処理する手癖から、HIGH&LOWとかマーベルシネマティックユニバースに見られる昨今の世界のエンタメ映画の潮流の話にも繋がりそうな気がしたけど、まだ根拠が乏しいし論旨がフニャフニャなので継続審議。ってか寝ます。